「ハローキティ・ストア」イスラエル進出の背景を考える(1)

パレスチナの平和を考える会のニュースレター『ミフターフ』30号(2011年8月発行)に掲載された記事(著者・役重善洋)を転載します。一部、修正・追加をしています。

ハローキティイスラエル進出と「反ボイコット法」


ガザ虐殺以降、国際的に急速な広がりを見せている対イスラエルBDS(ボイコット・資本引き揚げ・経済制裁)キャンペーンの一環として、昨年、当会が全力を挙げて取り組んだ「ストップ無印良品キャンペーン」は、約7ヶ月の取り組みの末、イスラエル出店中止という具体的成果を獲得することができた。しかし、今年2月になり、今度はサンリオがイスラエルに「ハローキティ・ストア」を2012年度中に出店するというニュースイスラエル紙「イェディオット・アハロノット」(英語版)によって報じられた。

当時はちょうどアラブ革命に注目が集まり、3・11以降の原発震災もあったため、「ストップ無印」のときのような迅速な動きを取れずにいたところ、6月2日、同じイスラエル紙のヘブライ語版で、なんと同月末までに「ハローキティ・ストア」の出店を計画していることが報じられた

事態の急転に驚いた私達は、サンリオ宛の公開質問書を6月13日に送付し、出店計画の再考を促した。さらに、出店中止を求める声は、イギリスアメリカイスラエル東京の運動団体や活動家からも上げられ、サンリオの軽挙に対する包囲網は国際的に広がるかに見えた。

しかし、サンリオは、私達の公開質問書に対するかたちばかりの回答を6月末日付で送付した後、7月3日、テルアビブ近郊のギヴアタイムに「ハローキティ・ストア」の1号店を出店した。これに対し、私達は「抗議と要請」を7月16日に送付したが、いまだサンリオからの回答はない。

サンリオによるイスラエル出店強行の直後、7月11日には「反ボイコット法」がイスラエル国会で可決し、即日発効した。この法律によれば、イスラエルに対するボイコットを呼びかける個人・団体は損害賠償の対象となり、NGOは、免税措置や助成金の対象から外され、企業は公的事業から排除されることとなる。

サンリオのイスラエル出店に反対を表明したイスラエルのグループ「Boycott from Within」は、ただちに抗議声明を発表し、あらためて、イスラエル公演を予定している海外アーティストへのボイコットの呼びかけを行っている。

この法律のボイコットの定義には、入植地との経済関係を意図的に避けることも含まれている。したがって、サンリオと契約している現地企業を含め、あらゆるイスラエル企業は、国家によって国際法違反を奨励されることとなり、潜在的アパルトヘイト企業にならざるを得ないのである。このことは、これまでイスラエル・ボイコットに取り組む運動団体のなかで議論されてきた、入植地ボイコットと全面的ボイコットとの区別を実質的に無意味にするものでもある。