「ハローキティ・ストア」イスラエル進出の背景を考える(2)

パレスチナの平和を考える会のニュースレター『ミフターフ』30号(2011年8月発行)に掲載された記事(著者・役重善洋)を転載します。一部、修正・追加をしています。(→連載第1回

イスラエルによる市民運動攻撃とバイバイ・キティ・キャンペーン


ボイコット運動に対するイスラエルの過剰反応は、国内にとどまらず、海外の運動にもその標的を広げている。今年3月21日のハアレツ紙によれば、イスラエル軍は、海外でイスラエルに対する「正当性剥奪」を目的とする活動をしている団体を監視し、情報収集するための部局を設立したという。イスラエルが、そうした活動を行ってきたことは、すでによく知られていることではあるが、そうした活動の対象が、幅広い市民運動にまで広げられ、強化されていることは、6月末から7月初頭にかけて国際的に取り組まれた「フロティッラⅡ」および「ウェルカム・トゥ・パレスタイン・キャンペーン」が、実に「手際良く」阻止されたことにも現われている。

「フロティッラⅡ」は、世界20カ国から数百人の平和活動家、著名人、ジャーナリストが10隻の船に乗ってガザ入港を目指す予定だった。しかし、出航前の船のスクリューやエンジンが何者かによって破壊されたり、ギリシャからの出航許可が出ないなど、様々な妨害が行われ、結局フランス籍のヨット1隻のみが出航に成功したものの、公海上イスラエル軍によって拿捕されてしまった。

「ウェルカム〜」は、フランスを中心とした世界各国の市民約600名が、7月6日、ベングリオン空港で、訪問先を「パレスチナ」と記して入国し、彼らを招待したパレスチナ市民グループと交流するというプロジェクトだった。しかし、イスラエルが事前にインターネット上などから収集した数百人の参加予定者の情報リストを各航空会社に通知したことで、彼等の多くが、テルアビブ行きの便への搭乗を拒否され、リストから漏れた数十名のほとんどは、ベングリオン空港で拘束され、強制送還された。

欧米を中心とした連帯運動とイスラエルとの攻防が繰り広げられているとき、日本では「ハローキティ・ストア」のイスラエル出店に憤る有志によって、「バイバイ・キティ・キャンペーン」が立ち上げられた。日本におけるBDSキャンペーンに関しては、イスラエル大使館の元広報部職員で現在も大使館と深いつながりを持っていると考えられる人物が、キリスト教シオニスト団体「キリストの幕屋」系の出版社の月刊誌に、パレスチナの平和を考える会が行ってきたキャンペーンについて詳しく紹介し、「まるで、中世のヨーロッパ」だと、反シオニズム反ユダヤ主義に読み替える古典的レトリックを用いて糾弾している(滝川義人「ボイコットは繰り返す」『みるとす』111号, 2010.8.)。原発震災が深刻な状況を脱していない現在、「バイバイ・キティ・キャンペーン」は、まだ大きな波及力を獲得できているとはいえないが、それでもイスラエルの監視対象とされていることは間違いない。