(東京)ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉他3団体 イスラエルにおける「ハローキティの店」開店に関する質問状

東京を中心に活動するミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉チェチェン・ニュースアジア太平洋資料センター核とミサイル防衛にNO! キャンペーンの4団体が連名で、イスラエルにおける「ハローキティの店」開店に関する質問状を7月9日付で送付しました。


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株式会社サンリオ 代表取締役社長
辻 信太郎様

私たちは、イスラエルによるパレスチナの軍事占領とパレスチナ人抑圧に反対し、イスラエルパレスチナの地で生きるすべての民族が対等に共存することを願い求める日本の市民です。
このたび私たちは、インターネット・サイト「ynet news」などにより、イスラエルで「ハローキティの店」がオープンするとの報道を目にしました。すでにイスラエルにはサンリオのキャラクターを用いた商品は流通しているようですが、御社の商品を扱う店舗がオープンするということは、影響力の点でこれまでにない大きな意味を持つかと思います。
私たちの中には、子どもの頃にサンリオ商品を愛用しており、自らの子ども時代の思い出の一部として、その記憶を大切にもち続けている人もいます。3月11日の震災後、東北地方への支援物資の中には、きっとたくさんのサンリオのキャラクター商品が入っていたことでしょう。御社の開発してきたキャラクターや、それらに関わるストーリーは、子どもたちの夢やあこがれを代弁する存在であり、世代や性別を越えて多くの人たちの共感を得ていると思います。
その御社が、パレスチナの地を軍事力で支配し、子どもを含む多くの民間人を殺害し続けているイスラエルの企業と提携し、かの地での市場開拓を目指すことについては、私たちにとって衝撃であり、たいへんな違和感を覚えております。サンリオもまた「儲かりさえすればいい」という利益至上主義に立つのかと残念な気持ちになりますし、今後は「キティちゃん」を目にしても「キキ・ララ」に再会しても心がときめくことはないでしょう。日本を含め、国際社会の多くの市民たちが、サンリオに対して幻滅していくことを考えると、このたびの判断が御社に「利益」をもたらすことはあり得ないことを、御社にお伝えしたいと思います。

さて、イスラエルにおける「ハローキティの店」オープンに関して御社が何らの情報も開示されていないなかで、確認させて頂きたい点も多々あります。つきましてはご多忙のところたいへん恐縮ですが、以下の各項目につき、ご回答を頂けますよう、お願い申し上げます。市民・消費者の声に対し、誠意をもってお答え頂けるものと信じております。

1.イスラエルは1967年以来パレスチナを軍事占領し、パレスチナ人の人権侵害を続けており、ヨルダン川西岸地区における「分離壁」建設に関しては、国際司法裁判所から「占領地での分離壁建設は違反であり、中止・撤去すべき」との勧告的意見を言い渡されています。私たちはこのような事実から、イスラエルへの資本投下のみならず、日本企業のイスラエル企業との一切の提携、協力関係を認め難いと考えております。イスラエルの企業の利益は税としてイスラエル政府に還元され、占領地の維持を含むイスラエルの軍事予算として使われるからです。この点につき、御社のお考えをお聞かせ頂ければと思います。

2. イスラエルは2008年12月27日から3週間あまりにわたり、パレスチナガザ地区を大規模侵攻し、18歳未満の子ども313人を含む、1400人あまりのパレスチナ人を殺害しました。イスラエルはこの攻撃について一切謝罪を行っておらず、イスラエルパレスチナを軍事占領し続けている以上、このようなことがいつまた起こらないとも限りません(比較的小規模な軍事侵攻やパレスチナ人の殺害は頻繁に起きています)。このような国に御社が出店をされることは、子どもたちに愛され親しまれるキャラクターを数多く作り出してきた御社のイメージを大きく傷つけ、御社の企業活動への信頼を損なうものだと思います。この点につき、御社のお考えをお聞かせ頂ければと思います。

3. 現在イスラエル国会では、イスラエルに対する国際的なボイコットに対処することを目的とした「反ボイコット法案」が審議されています。これが法律として成立すると、イスラエル企業が入植地への製品販売を拒否した場合、処罰の対象となります。したがって法案が通過した場合、イスラエルにおける御社の提携企業が今後、軍事占領地内にある入植地に向けた業務展開を行う可能性も十分考えられますが、こうした現地事情についての調査はされているのかどうか、教えてください。

4.ここで言う入植地は、その建設自体が国際法違反であり、これは日本政府も認めるところです。したがって、御社がイスラエル企業と提携することは、入植地での経済活動という国際法違反の行為に対し、御社が直接協力することにつながります。このことは御社のコンプライアンス憲章にある「国内外の法令や社会規範及び会社規程を遵守」することと矛盾しますが、どうお考えになりますか。

5.また、イスラエルでの同法案の成立のいかんにかかわらず、既存の入植地の撤去の意思を示さないばかりか、入植地建設を続行するイスラエル企業との提携を行うこと自体、「世界中がみんな“なかよく”」との御社の理念とは相容れないと思います。「世界中がみんな“なかよく”」とは、少なくとも犯罪行為に目をつぶって誰とでもやみくもに「なかよく」することを目指すものではないはずですし、もしも御社がその理念を具体化しようとするのであれば、イスラエル占領政策によって被害を被っているパレスチナの人々、とりわけパレスチナの子どもたちにまず目が向けられるべきでしょう。この点につき、御社のお考えをお聞かせください。

日本の企業がイスラエルに出店することは、その企業のイスラエルへの友好的な姿勢を示すだけでなく、現地において「日本はイスラエルに友好的である」というメッセージとして機能します。イスラエルにおいて今後オープンする「ハローキティの店」の運営形態がどのようなものであれ(御社のフランチャイズ店であれ、単なる卸売り先であれ)、このような機能を果たしてしまうこと自体は変わりありません。イスラエルによる相次ぐ暴力に反対する日本の市民として、そのような関係に巻き込まれることに対し、私たちははかり知れない精神的苦痛を感じます。どうか私たちの懸念を真摯に受け止め、十分ご検討の上ご回答頂けますよう、よろしく申し上げます。
                                       2011年7月9日                                 
ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉  チェチェン・ニュース
アジア太平洋資料センター    核とミサイル防衛にNO! キャンペーン